研究・発表 |
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平成16年度千葉県栄養改善学会奨励賞受賞 |
栄養指導の継続により糖尿病壊疽が治癒した一例 |
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いちはら協立診療所 上田悦子 |
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【はじめに】 |
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2年6ヶ月栄養指導を継続した結果、野菜の摂取量の増加、減塩、適正な蛋白量の摂取など、 食生活の変化により、8年前から治らなかった足の壊疸が治癒した症例を報告する。
当診療所は患者の症状、希望にあわせ1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月おきに継続している。
栄養指導は継続実施することで食事や生活習慣が改善し、効果も持続することが多い。 特に高齢者では、長年続いた食習慣を1~2回の指導で変えるのは難しいため、繰り返し指導する必要がある。 |
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栄養指導数(2003年4月~2004年3月まで)
延べ242名(実数では78名)、2年以上の継続者は28名である。 |
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【症例】 |
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71才 男性 一人暮らし |
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- 99年11月受診時BMIは23.7 血圧164/100mmHg
- 糖尿病、糖尿病壊疽、糖尿病性腎症、高血圧、狭心症、胃潰瘍
- 48才の時、会社の健診で糖尿病と診断されたが放置。
- 60才の時、足のまめがつぶれて出血し、糖尿病による壊死と診断された。 足の消毒とガーゼの交換に1日おきに5年も通ったが良くならなかった。
- 66才(1999年10月)引越しを契機に、当診療所に通院、初めて栄養指導を受けた。
指示カロリー1800kcal、蛋白質50g、塩分7g
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【経過】 初回(図1) |
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1日摂取量栄養量 2100kcal程度
塩分 11.6g 蛋白質 75.4g |
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食事内容 |
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- 野菜は嫌い、漬物しか摂っていなかった。
- 市販の惣菜も多い。
- 魚の干物、佃煮。
- 穀類はよく摂り、麺類を好む。
- 果物は毎日3単位と多い。
- 和菓子、間食も摂っている。
- 油脂類は少なかった。
- 自分で調理することはない。
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P, F, Cバランスは、
P 14.8% : F 21.2% : C 63.9% |
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【経過】 6ヶ月後(図2) |
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1日摂取量栄養量 1800kcal程度
塩分 10.3g 蛋白質 68.6g |
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食事内容 |
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- 間食はやめた。
- 果物 1~2単位に減少。
- 野菜は市販の野菜サラダや、タマネギスライスを食べるようになったが、1日120g程度であった。
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傷の治療は2~3日に1度となったが、一進一退を繰り返していた。 |
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【経過】 24ヶ月後(図3) |
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1日摂取量栄養量 1600kcal程度
塩分 6.7g
蛋白質 58.5g(適正量に近づく) |
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食事内容 |
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- 汁物を減らした。
- 野莱は、サラダ菜、トマト、セロリ、
モヤシ妙め、小松菜のお浸しを、
自分で調理して食べるようになり、
1日400g以上摂るようになった。
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本人の自覚症状として、血行がよくなり足の先がポカポカするようになった。 野菜を積極的に食べるようになってから6ヵ月後に壊疸が治癒した。 |
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【体重の推移】 |
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- 体重を毎日、朝、晩、記録したため、減量を維持できた(図4)。
- 食事内容は無理強いせず、書ける時に記入するよう指導した。
- ヘモグロビンA1cは6.3~7.4%と変動があったが(図5)傷の程度により歩けなかった時もあり、運動量による影響もあった。1日、1500~7000歩であった。
- 血清クレアチニンは0.9~1.2で大きな変化は見られず(図6)、腎症は悪化しなかったと思われる。
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【方法】 |
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栄養指導を継続実施するための方法 |
- 診察日は栄養指導日と合わせるよう、受付予約担当者に協カしてもらう。
- 患者の希望する日と時間を聞き、予約日を選ばせる。
- 指導の曜日、時間帯の枠を広げる。(火曜と土曜の午前、月曜午後は予備日)
- 来られない時は、予約の取り直しをするよう話しておく。
- キャンセルの時は、電話をかけ、次回の予約をとり直す。連絡がとれない時はカルテに「栄養指導キャンセル次回予約お願いします」と記入する。
- 面接だけではなく、時には電話での質問、相談にも応じ信頼関係を作る。
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【まとめ】 |
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- 糖尿病など慢性疾患の高齢者の患者は、これからも増加する傾向である。
- 時間にゆとりがあり20~50代よりも継続した栄養指導を受けやすい。
- 時間はかかるが、継続実施することで改善することは多い。
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これからも、よき相談相手となり、患者が病気の自己管理に、意欲をもって取り組むことができるような栄養指導を心がけたいと思う。 |
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